はじめに
食事からの栄養補給が難しい方にはTPN(中心静脈栄養法)が実施されますが、そのときに使用される高カロリー輸液や院内製剤の一部は、無菌的に調製する必要があります。私が働いている所では、ほとんどの無菌調製がTPNであり、調製は薬剤師が行います。そこで今回は、TPNの無菌調製ではどのような仕事をするのかについてを説明していきたいと思います。
TPNを使う患者さんは免疫が低下している人が多いから、
微生物や粒子などの異物による汚染は避けたいところ!
無菌調製を実施する前に
TPNの無菌調製は無菌室で実施しますが、その前にいくつか必要なことがあります。まずはその仕事から説明します。
①無菌調整が必要な患者さんの混注する注射を取りそろえる
当然、無菌室で混注する輸液などの注射製剤は、先に取り揃えておく必要があります。注射の調剤と同じ流れで取り揃えて、監査まで実施します。
②カルテを確認する
直前で処方が中止や修正になっていたり、当日に採血が実施されていて、検査値が変わっている場合があります。中止や修正がされていれば、無菌調製の必要がなかったり、取り揃える注射を変更する必要があります。また、当日の採血で検査値が変動していると、疑義照会が必要になることがあります。①の監査のときにも電解質はもちろん見ますが、取り揃え自体は前日や当日朝に済ませてあることがほとんどなため、当日分の採血結果が処方箋の検査値に反映されていない場合が多いです。疑義照会が必要な場合に早めに対応するためにも、無菌調製を実施する前にはカルテでの確認が必須となってきます。
無菌調製
実際に無菌調製するときは、以下のような流れで混注を進めていきます。手を洗う、ガウンや手袋等を装着する、入室する、クリーンベンチを立ち上げるといった流れは省きます。クリーンベンチを使う直前からスタートします。
①クリーンベンチの掃除
TPNの無菌調製では、無菌状態での作業が必要なため、クリーンベンチという作業台を使用します。使用前後には毎回、アルコールなどで清拭し、いつも清潔な状態からスタートします。
②混注に使用する注射製剤や道具の清拭
クリーンベンチ内で使用するものについても、清潔にした状態でクリーンベンチ内に入れる必要があるため清拭をしなければなりません。袋に入っている製剤や道具は、その袋の内部は無菌状態になっているため、袋の外側をしっかり清拭してクリーンベンチ内に入れます。注射製剤をクリーンベンチ内に入れるときには、間違っていないか処方箋と照らし合わせながら行います。
③混注
実際に混注をしていきます。この時も、処方箋を見える位置に置き、確認しながら混ぜていきます。この時、患者さんに投与するルートを刺す場所については、針を刺すのを避け、他の場所を使って混注していく必要があります。混注する製剤が多い、輸液の一部を破棄する処方となっているなど、刺す回数が多くなるときには、事前にどのような手順で刺していくか考えておくとあたふたせずに無菌調製ができます。また、全ての製剤を入れ終えたら、均一になるようにしっかり混ぜ合わせます。この時使用したシリンジや空になったアンプル、輸液バッグ等はすべて捨てずに監査に回します。何を混ぜたかわかるようにしておくためです。
④片付け
混注が終了したら、使ったクリーンベンチを片付けます。この時、最初と同様にアルコールできれいに清拭する必要があります。クリーンベンチのスイッチを落として終了です。
混注した高カロリー輸液なども、監査は必要です。別の薬剤師に、混ぜた薬が間違っていないか、均一に混ざっているか、異物が混入していないかなどをチェックしてもらいます。
まとめ
今回は、TPNの無菌調製についてを取り上げました。無菌調製も外からはなかなか見えないため、実際にやったことがないとイメージしづらいのではないでしょうか。TPNの無菌調製はただ混ぜるだけではなく、いくつも確認することがあります。TPNは食事がとれない患者さんにとっては重要な栄養です。必要なことは漏れなくやったうえで、無菌的な環境で調製していかないといけませんね。薬局でも無菌調製をしているところもあるようですが、病院の方が数や種類は多いと思います。興味がある学生さんは、ぜひ実習や病院見学の際にいろいろ聞いてみてください!
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