持参薬鑑別ってなに?

病院薬剤師の仕事

はじめに

 持参薬鑑別というのをご存じでしょうか?入院した患者さんが入院前に飲んでいた薬を確認する非常に重要な病院薬剤師の仕事です。入院前に飲んでいた薬を入院後も続けていくのか、今回入院することとなった症状や病気が、飲んでいた薬の効果不足や副作用ではないかなど入院中の薬物治療に大きく関わってきます。持参薬鑑別ではどのようなことをするのかについて説明したいと思います。

持参薬鑑別は入院中の薬物治療に関わる大事な仕事!

間違えたり、漏れたりすることがないように必要な確認はしっかりしていくよ

持参薬鑑別の流れ

 持参薬鑑別の大まかな流れは次のような通りです。

①入院した時点で、持ってきた薬やお薬手帳、転院前の病院からの薬の情報等を薬局に提出してもらう
 (薬を持ってきていない場合は、可能な限り家族や同居の方に薬を持ってきてもらいます)
  ⇓
②薬剤師が、お薬手帳などの情報と実際の薬を照らし合わせ、薬剤名や用法用量、処方元等をカルテに入力していく
 (このとき、不明点等あれば本人や家族、処方元に情報の確認をします)
  ⇓
③同じ薬が自分の病院にない場合、代替薬を調べて入力する
  ⇓
④すべて入力し終えたら、全職種が見えるように登録する

持参薬鑑別のときに気を付けること

 持参薬鑑別では、使っている薬をただ機械的に入力すればよいというわけではなく、いくつか注意することがあります。自分の経験を踏まえてその注意点を紹介します。

必要な情報が不足していないか
 お薬手帳を確認していると、用法がはっきりと書かれていない薬があったり、使用しているインスリンの単位数が記載されていない、定期的に通院しているはずなのに他の薬と比べて明らかに少ない日数で毎回処方されている(医師の指示で毎日は飲んでいない可能性がある)、お薬手帳に記載されていない薬を持ってきているなど情報が不足している薬があります。今は使用していない薬であれば問題ありませんが、入院中も継続する可能性がある薬では、用法用量や定期的に飲んでいる薬などの情報は重要となってきます。情報がもっと欲しいなと感じた時には本人や家族に確認し、それでも求めていた情報が得られない時には処方元の病院や薬局に電話で聞き取りを行います。

自分の病院で持参された薬(またはその代替薬)を処方すると考えた時、その薬の在庫は十分にあるか
 よく処方されている薬であればあまり問題ありませんが、ほとんど処方されない薬であれば、あまり在庫がない可能性があります。そういった薬では、鑑別をした日に追加で発注しないと間に合わない場合もあります。自分の病院にもこの薬があるからと思っていたら、処方が出た時にはほとんど薬がなく、慌てて発注したが間に合いそうにないとなれば目もあてられません。事前の準備が必要となります。

注射など、お薬手帳にない定期薬はないか
 腎性貧血や骨粗鬆症、統合失調症の治療薬などで月1回の注射があります。他にも、3カ月に1回や6カ月に1回、1年に1回といった注射があります。こういった注射は病院で打つことがほとんどで、お薬手帳に貼付するシールがある場合が多いです。しかし最新のページには貼られていなかったり、貼り漏れがあったりすることもよくあるため、鑑別のときにはお薬手帳を少しさかのぼって確認し、場合によっては本人や家族、かかりつけに確認する必要があります。

アレルギー、副作用歴の記載はないか
 お薬手帳の最初のページにはアレルギー歴のある薬剤を記載する場所があります。また、他の病院に入院したことがある方では、お薬手帳に薬剤管理サマリーが貼付してることがあり、その中にアレルギーや副作用が出た薬剤に関する記載がされていることがあります。他の職種が得ている情報の中にはない情報がある可能性もあるため、お薬手帳がある場合には積極的に確認するようにしています。

開始されて間もない薬や増量、減量された薬がないか
 薬の中には、開始後一定期間、定期的な採血が添付文書上推奨されているものがあります。また、特に薬が増量されている場合には、治療中の病気のコントロールがあまり良くない可能性があります。入院中の薬物治療の継続や、副作用のフォローに重要となる可能性があるため、得られた情報は医師に伝えたり、薬剤管理指導に活かしたりします。

まとめ

 今回は、持参薬鑑別について紹介しました。薬剤師だけでなく、医師や看護師も鑑別を参考にすることが多く、丁寧でミスがない仕事を求められます。また、薬剤師にとっても得られる情報が非常に多く、今後の薬物治療に大きく関わってくる内容であるため、かなり重要な仕事になってきます。私もミスがないように努めつつ、鑑別をその後の初回指導や薬物治療のフォローにつなげていけるよう頑張っていきます!この持参薬鑑別は、主に病院薬剤師が経験する仕事です。実習でも紹介があると思うので、病院実習がまだの学生さんはぜひその時に、学んできてください!

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