病棟薬剤師の仕事③-自己注射の指導-

病院薬剤師の仕事

はじめに

 自己注射というと、どういった薬が思い浮かびますか?代表的なものとしては、インスリンや骨粗鬆症の治療薬などですね。「自己注射」というぐらいなので、基本的には自分でしてもらうことが多いですが、自宅で生活をする患者さんの場合、一緒に住む家族が注射をすることもあります。また、施設で生活をする方は、施設の職員がすることもあります。
 入院中に、インスリンや骨粗鬆症の自己注射が始まる患者さんは少なくありません。本人で注射ができそうな場合は本人へ説明し、本人では難しい場合は他に注射をしてくれる人がいる環境かを確認の上で、必要時は家族へ、使い方や注意点などの説明をします。今回は、そんな自己注射の指導についてを説明したいと思います。

特に初めて自己注射をする方の場合、不安を感じていることも多いよ・・・

丁寧に効果的に使えるように説明が必要です!

自己注射の種類

 自己注射製剤は意外にもたくさんあります。例としては以下のようなものがあります。

骨粗鬆症治療薬
 フォルテオ皮下注、テリボンオートインジェクター、オスタバロ皮下注など
糖尿病治療薬
 インスリングラルギン、ルムジェブ注ミリオペン、トルリシティなど
関節リウマチ治療薬
 エンブレル皮下注、シンポニー皮下注オートインジェクターなど
潰瘍性大腸炎治療薬
 ヒュミラ皮下注、エンタイビオ皮下注など

*ヒュミラなどのように、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎ともに適応があるなど、複数の病気に適応がある薬剤もあります。

自己注射の指導(初回)

 初回の人は、「自分で注射をするんですか…」と不安を感じている人が多いです。効果的に継続できるように、丁寧でわかりやすい説明が必要です。

効能、効果
 糖尿病治療でインスリンを使用する、骨粗鬆症があるから自己注射をするなど、多くの方が何の病気に対して自己注射をするのかについては理解しています。しかし、自己注射に対して怖い、面倒くさいなどの思いがある方で、「飲み薬ではだめなのか」と聞いてこられる方は一定数います。こういった方には、内服と比べた自己注射のメリット(効果が高い、現在の疾患の状態から自己注射により早めにコントロールが必要など)を説明することで、自己判断での中止や治療拒否につながらないように努めていきます。
用法、用量
 骨粗鬆症の注射では、フォルテオなどは1日1回使用し、テリボンは週に2回使用します。インスリン製剤は種類によって1日1回であったり、1日3回であったり、単位数も患者さん毎に医師からの指示が異なります。特に、インスリンは自分で単位数を合わせて注射しないといけないため、単位数については患者さんとしっかり確認をします。
自己注射の手技
 アルコールでの清拭や針の付け方・外し方、インスリンであれば単位の合わせ方、空打ちの方法や注射時の注意点など、最初から最後までデモ器を使いながら一通り説明をします。場合によっては、手技を確認しながら実際に自己注射をしてもらいます。インスリンを使用したことがある方は、骨粗鬆症の自己注射も比較的問題なくできることが多いですが、空打ちが毎回必要なインスリンに対して、フォルテオなどは基本初回のみでよいことは違いとして伝える必要があります。
廃棄方法
 自宅で適切でない方法で処分すると、ごみ回収の際など、他の人に刺さる危険があります。針が貫通しないクッキーなどが入った缶等に入れ、中身が出ないように封をして病院や薬局に持って行くように説明します。オートインジェクターなど針が取り外せないものは、廃棄袋がついていることが多いです。薬を渡すときには廃棄袋も必要な分渡し、その中に使い終わった注射器を入れて同じく病院や薬局に持って行くように説明します。
保管方法
 自己注射製剤は、開封前は冷所保管がほとんどです。開封後はインスリンは常温、1回使いきりではないフォルテオなどは開封後も冷所で保管します。両方を使用することになる方は特に注意が必要ですので、しっかりと説明します。

自己注射指導(継続)

 大まかな手技や注意点等は理解していることが多いため、確認事項は吸入指導と同じ、以下のような項目です。

継続にあたって問題はないか
 自己注射をされている方で継続が難しそうに感じる場面としては、加齢や認知機能の低下などで注射器を徐々に扱えなくなってきているときです。特に一人暮らしの方は、他に注射をしてくれる方がいないため、本人がしっかり扱えるかどうかが鍵になってきます。
我流になっていたり、大雑把すぎる扱いになっていないか
 単位数が適当な方はあまりいませんが、アルコールでの清拭が雑になっている、自宅での保管方法が適当になってきているといった方には出会ったことがあります。指導するときにそういった手技をみたり、話を聞いた際には、今の問題点とその理由、適切な使い方を説明する必要があります。

まとめ

 自己注射は副作用が出なければ、長期間使用することを想定する場合が多いです。効果が高い、病態を考えると必要性が高いといった場合が多いため、本人または家族がその自己注射製剤をうまく扱えることが治療の上で重要となってきます。よりよい効果や副作用予防のためにも、丁寧でわかりやすい説明を心がけたいです。薬局でも、代謝内科や整形外科、膠原病内科などの近くの所では自己注射の取り扱いがあると思いますので、病院・薬局薬剤師ともに手技をしっかり指導できるというのは必要な知識・能力です。吸入と同じく、説明動画がある製薬会社や個人で自己注射の仕方を発信している方がいますので、興味がある方はぜひ見てみてください!

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