はじめに
前回は、形式的疑義照会について説明しました。今回は薬学的疑義照会についてです。知識が求められることがほとんどの薬学的疑義照会ですが、最適な治療効果や副作用予防のためには重要なことですので、どういったことをしているのか知っていただけたら幸いです!
はじめのうちは先輩と相談しながら、毎回緊張して電話をかけてました・・・
でも、知識や経験を積んだら、ある程度自信もって疑義照会できるようになったよ!
薬学的疑義照会
薬学的疑義照会が必要な例としては、添付文書とは異なる用法・用量で処方されている、併用・病態禁忌の薬剤が処方されている、採血結果から用量調整が必要などがあります。
・用法、用量が添付文書と異なる処方がされている
例えば、高血圧や狭心症で使用されるアムロジピンは、1日最大10mgまでと添付文書に記載されています。つまり、1日15mgなど、添付文書記載の量を超えて処方されたら疑義照会の対象となります。また、抗生剤のレボフロキサシンは1日1回で使用することがほとんどです。1日2回で投与することは基本ありません。こういった場合、異なる用法で処方した医師の意図を確認しなければいけません。ただし用法については、添付文書に1日1回と記載されていても、1日量の上限を超えなければ、1日2回にあえて分割して処方することがあります。アムロジピンはそういった薬の一つです。そのため、「添付文書に記載されていないから疑義照会だ」と言って問い合わせると、記載がなくとも一般的に使用される用法のため、「なにがだめなの?」と言われてしまいます。ガイドラインにそういった用法の記載がある薬剤もあるので、注意しなければいけません。
・併用又は病態禁忌の薬が処方されている
併用禁忌の例としては、抗生剤のクラリスロマイシンと睡眠薬のベルソムラです。クラリスロマイシンが体内でのベルソムラの代謝をブロックすることで、ベルソムラの血中濃度が大きく上昇し、副作用が出やすくなります。このように、併用すると効きすぎるまたは効かなさすぎる、副作用のリスクが高くなるなどの理由で併用してはいけない薬がたくさんあるので、そういった処方があれば必ず医師に問い合わせなければいけません。また、パーキンソン病の患者さんでは、症状を悪化させるためハロペリドールという薬は避けてくださいといったように、この病気がある方には使えませんといった薬もたくさんあります。そういった処方があった時も、医師に確認しなければいけません。注意したいのは、「他の病院から併用禁忌の薬剤が処方されている」ときです。処方箋だけではわからないため、お薬手帳が活躍します!お薬手帳をしっかり確認し、見落とさないように気を付けたいですね。
・腎機能や電解質からすると、薬の量が過剰又は過少
例えば、上でも例に出したレボフロキサシンです。腎臓から薬が排泄されることで知られており、腎機能の値によっては用量調整が必要な薬です。腎機能が悪い方に、腎機能が正常な方と同じ量のレボフロキサシンが処方されていたら、腎臓からの排泄が十分ではないため、副作用が出やすくなってしまいます。腎機能に合わせた減量をしなくてよいか、処方した医師に確認が必要です。ここでも注意が必要なことがあります。腎機能で調節が必要な薬には、「この値未満は減量を検討してください」と目安になる値があったり、電解質にも、この値からこの値までが正常ですという基準値があります。その目安の値を少しでも下回ったら、またはその電解質の正常値から少しでも外れたら疑義照会をしないといけないのかというと、そういう訳ではありません。病気や症状がどの程度ひどいのか、どれくらい目安となる値から離れているのか、その薬は今後どの程度続けていきそうなのかというのを総合的に判断し、各薬剤師が疑義照会するかどうかを判断しなければいけません。ここが個人差が出て難しいところではありますが、最終的には経験を積んでいくしかないかなと思います。私も仕事し始めたころは、いつも悩んでいました💦今でも時々悩みます・・・。
疑義照会における基本的な注意点
疑義照会は、必ず相手となる医師がいます。医師も一人の人間ですので、「ここは添付文書からすると間違っています」とストレートに伝えてしまうと、気分を害してしまいます。また、外来診療中や他の患者さんへの説明中に、何を言いたいのかわからない疑義照会や、間違った疑義照会をされると、イラっとしてしまうのは想像できますよね?急ぎではないものについては「今よろしいですか?」と前置きをしたり、相手が外来中であるが、急がないといけない疑義照会については、「外来中にすみません」と前置きをしたうえで、聞きたいことや提案したいことを簡潔に伝える必要があります。また、医師からは「じゃあ他に薬は?」と聞かれることがあります。カルテや添付文書、ガイドラインなどを調べ、根拠となる情報の収集だけでなく、代替薬についても考えたうえで疑義照会するのがよいでしょう。
まとめ
薬学的疑義照会や疑義照会の注意点について説明しました。疑義照会をするときは短い時間の中でもいろいろ調べたり、考えたりすることも多いため、初めの頃はいつも緊張していました。しかし、知識や経験を積むことで徐々に慣れていきます。疑義照会は薬剤師としてはとても重要な仕事ですので、今回の記事でなんとなくでも、疑義照会ってこんな感じなのかというのが伝わればうれしいです!いずれは、自分が実際どんな疑義照会をしているのか、失敗談なども紹介できればと思います!
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