病棟薬剤師の仕事②-吸入指導-

病院薬剤師の仕事

はじめに

 以前の記事で病棟での初回面談について紹介しました。今回は、2回目以降の薬剤管理指導の例として、吸入指導を紹介していきます。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された患者さんで、吸入薬が開始になった、または使用している方は多くいます。入院中に吸入薬が開始となった時には、当然使い方や注意点などの説明が必要です。一方で、入院前から使っていて問題ないですという患者さんでも、自分では気づかないうちに我流になっていて必要な操作ができていない、吸入の力が弱いなどうまく吸えていないことが度々あります。そういった患者さんの吸入手技を確認し、より効果が出るよう、より副作用が防止できるように指導していくというのも病棟薬剤師の仕事です。実際の指導の内容を、吸入薬が初めての方と入院前から使っている方の2パターンに分けて説明していきたいと思います。

発作や咳の出やすさなどに関係するから、吸入の手技って治療の上ですごく大事!

呼吸機能検査が悪いと、吸入がうまくできていない可能性を考える必要もあります

吸入指導(初回)

 初回の吸入指導では、吸入薬を初めて使用するまたは今まで使用していた吸入薬と使い方や注意点が違うという方が多いです。使い方から説明が必要という場合が多いため、丁寧に1つ1つ指導していきます。初回に説明するのは下記のような項目です。

・効能、効果、副作用
・用法、用量
・吸入器の操作方法
・使用後のうがいについて
・お手入れ方法

 それぞれの内容や理由について説明します。

◇効能、効果、副作用
 気管支喘息またはCOPDのどちらか一方に使用できるという吸入薬もあれば、両方に使用可能な吸入薬もあります。しっかりと吸入薬を継続していくためにも、自分がどの疾患に対して吸入薬を使用するのかや、その必要性を説明します。また、気を付けるべき副作用も吸入薬ごとに違ったりします。そのため、それぞれに合わせた注意すべき副作用の説明をしていきます。
用法、用量
 1日何回使用するのか、1回で何吸入すればいいのかは吸入薬ごとに違います。吸入回数が少なくて十分な効果が出ない、逆に多すぎて副作用につながったといったことを避けるためにも、吸入回数をしっかりと確認することは必要なことです。
吸入器の操作方法
 各吸入薬ごとに、操作方法や空打ちの回数、残数カウンターの見方、吸入時の息の吸い方などが異なります。各吸入器に応じた使い方の説明が必要です。
うがいの理由、方法
 ステロイドが入っている吸入薬では口腔カンジダ症、嗄声などの副作用予防のためにうがいが必要です。その他の吸入薬は必須ではありませんが、副作用予防という点でいえば、うがいをした方がよいと思われます。さらに、うがいの方法で推奨されているのが「ガラガラ」うがいと「クチュクチュ」うがいを2回ずつすることですので、初めて吸入薬を使用する方には特にしっかりと説明するようにしています。
お手入れ方法
 吸入器ごとにお手入れ方法も異なっており、乾燥した布で吸入口を拭くことが推奨されているもの、吸入器と薬が分離でき、吸入器の水洗いができるもの等ありますので、それぞれに合わせたお手入れの仕方を説明します。

 ここに記載したもの以外にも、使い終わった後の処分方法、吸入動画の紹介等説明した方がよい内容はいくつかあります。説明時間が長くなりがちなので、簡潔にわかりやすく説明することも心掛けたいですね。

吸入指導(2回目以降)

 吸入薬を継続して使っている方でも、入院中に吸入指導を実施しています。自信がある人でも、意外とうまく吸えていない、必要な操作を忘れているといったことがあります。よりよい治療のために、確認するのは以下のような項目です。

今後も継続可能と思われるか
 練習器を使用してもらうと、うまく吸入できていれば鳴るはずの音が弱い、吸入器から薬が出るタイミングと自分が吸入するタイミングが合っていない、操作がうまくできない等の問題が見られる場合があります。サポートする器具を取り付ければ解決する場合もありますが、今後継続していくのは難しいと判断される場合もあります。そういった際には、継続困難と思われる状況を処方した医師に報告し、他にその患者さんが使用できそうな薬があれば提案をしたりします。
うがいができているか、吸入忘れが多くないか
 慣れてくると、「このぐらい・・・」という気持ちが出てくる人も少なくはないです。吸入の精度をより上げるため、副作用予防でうがいが必要であること、できないときは水を飲む・食事の前に吸入するなど代替案があること、今は症状が安定していても、吸入を頻回に忘れていると症状が悪化する場合があることなどを再度説明します。
我流になっていないか
 これは自分ではなかなか気づけないです。吸入指導の中で、省略したり大雑把にしてしまいがちな部分を指摘して、治療効果を高めることにつなげていきます。

まとめ

 今回は、病棟の薬剤管理指導の中で、吸入指導についてを説明しました。初回の人はもちろんのこと、継続の人も入院中に1度は吸入手技の確認をしたいところです。特に、発作の回数が増えたなどのコントロール不良を感じる症状が増えているときには介入した方がよいでしょう。吸入方法については、製薬会社などが動画を出していたりもするので、少しでも興味がある方はぜひ見てみてください!

コメント

タイトルとURLをコピーしました